招き寄せるデフレの悪夢
物価が全般的かつ継続的に下がるというのが経済学
教科書でいうデフレの定義だが、生活実感には必ず
しもそぐわない。
物価がたとえ上がっていても、賃金上昇が追いつかない
と、デフレ圧力というものが生じる。
懐具合がよくないのだから消費需要が減退する。
低販売価格を強いられる企業は賃上げを渋る。
こうして物価が下落に転じ、賃金も道連れになる。
それこそがデフレの正体だ。
こじれると賃金が物価以上に下がる。
政府がわざわざ国民生活をデフレ圧力にさらすのが
消費税増税だ。
モノやサービス全体を一挙に増税で覆いかぶせる。
平成9年度、政府が消費税率を3%から5%に上げると
物価は強制的に上がったが、名目国内総生産(GDP)
の成長が止まった。
その後、物価下落を上回る速度で名目GDPが縮小する
長期トレンドに陥った。
上述したように、消費税増税後、産業界全体が賃金や
雇用を減らすようになり、物価の全般的な下落と国民全体
の所得減が同時進行する悪循環が起きた。
平成21以降の名目GDP、GDP全体の物価指数であるデフレーター
と日銀による資金供給(マネタリーベース)の前年同期比の
増減率を比べると、リーマンショック後のデフレから抜け出せ
ない中、23年3月のは東日本大震災に遭遇するとGDP、物価
ともマイナスに落ち込んだ。
日銀のS総裁は金融政策ではデフレを直せないという「日銀理論」
の権化のような存在だ。
S日銀が東日本大震災後、資金供給を増やしたのは、つかの間
で、資金を回収する引き締めに戻し、デフレを高進させた。
デフレを放置し、慢性デフレを悪化させる消費者増税にのめり込んだ
旧M党は、衆院総選挙で脱デフレと大胆な金融緩和を唱える自民党に
惨敗した。
A政権は異次元金融緩和を中心とするアベノミクスで景気を拡大させ
たが、26年度の消費税率8%への引き上げで大きくつまずいた。
デフレーターもGDPも大きく落ち込んだ後、輸出主導で少し持ち直した
が、後半は2四半期連続で名目GDPが前年同期比マイナスになった。
財政・金融のフル稼働が必要不可欠
中国発の新型コロナウイルス・ショックは2008年9月のリーマン・
ショックをしのぐ衝撃を世界の金融市場に与えてやまない。
ところが日本の対応は小出しで、しかも新型コロナ・ショックの
速度に追いつけない。
日銀の追加策は株買い入れが中心で金融の量的拡大は小幅だ。
政権は早急に財政と金融の両輪のフル稼働を決断し、消費税の
大型減税によって内需を支えると同時に、国債を増発して日銀
に本格的な量的拡大再開の道を切り開くべきだ。