巨星ベテルギウスに異変
ベテルギウスは銀河系にある巨大な恒星で、
オリオン座の左上でオレンジ色に輝いている。
地球から約600光年離れているが、宇宙の
スケールでは隣近所だ。
直径は太陽の約1千倍。
仮に太陽と同じ場所にあれば、地球をはるかに
超えて木星付近までのみ込む大きさだ。
約1千万年の寿命を迎えて膨張した終末期の姿で、
最期の超新星爆発を起こす直前の状態にある。
このベテルギウスが昨年10月ごろ、突然暗くなり
始めた。
1月に入って明るさは普段の約4割まで減り、
少なくとも過去25年間で最も暗くなった。
表面温度が100度ほど低下し、可視光を吸収する
分子が生じて暗くなった可能性がある。
ベテルギウスは表面が脈動と膨張と収縮をゆるやかに
繰り返しており、温度が下がるのは膨張時だ。
このため「爆発の前兆か」と騒がれたが、明るさの
変化は昔から何度も観測されてきた。
鉄の中心核が崩壊
爆発の鍵を握るのは表面ではなく、中心部の変化だ。
恒星は中心部で水素などの軽い元素が核融合反応を
起こし、より重い元素に変化して膨大なエネルギー
を生み出し続けている。
長い年月をかけて核融合を繰り返すと鉄が生じる。
鉄は互いに核融合を起こさないため蓄積され、直径
1万キロほどの核に成長すると自らの重みに耐えきれず
崩壊。
鉄の原子を構成する陽子と電子が合体して中性子が大量
に生まれ、直径10キロほどの新たな核となる。
このときに生じた強烈な衝撃波が、約3日後に表面に到達
すると大爆発が起きるわけだ。
爆発後は中性子の核だけが残り、
非常に高密度な中性子星になる。